のぼりんさん,こんにちは,KENZOUです。
>連続変換とは、正準変換群(あるいはシンプレクティック群)の中で、滑らかな経路で恒等写像(単位元)と繋げる変換、つまり単位元の属する連結要素に含まれる正準変換、離散変換はそうでない正準変換、という意味と想像しました
え~っと,例によってピンボケの返信となりますが,適当に読み流してご一考いただければと思います。
既にご承知のこととは思いますが,無限小正準変換を少し復習してみます。
正準変換 (q_i,p_i) →(Q_i,P_i) でδq_i = Q_i - q_i, δp_i = P_i - p_i が微小であるものを無限小正準変換といいました。「量子力学を学ぶための解析力学入門」のテキストを参照すれば無限小正準変換は
Q_i = q_i + ε(∂G/∂p_i), P_i = p_i - ε(∂G/∂q_i) (1)
と表わすことができます。ここでεは無限小のパラメータ,Gはq,pの任意の一価連続微分可能な関数で無限小変換の母関数ですね。
無限小変換の有難味は,有限の正準変換は無限小変換を無限回連続して行うことで実現できるという点にあります。具体的にはεを連続的に変えるパラメータ s を考え,その微小変化 ds (= s+ds-s) に対応する q, p の変化は(1)より
dQ_i = Q_i - q_i = (∂G/∂p_i)ds, dP_i = P_i - p_i = -(∂G/∂q_i)ds,
と表わせます。これを整理すれば正準変換 (q_i,p_i) →(Q_i,P_i) は次の微分方程式の解ということが分かります。
dQ_i/ds=∂G/∂P_i, dP_i/ds=-∂G/∂Q_i ( i = 1,2,・・・f ) (2)
具体的な解は s = 0 でq_i, p_i となる Q=Q(q,p,s), P=P(q,p,s) により与えられます。正準変換は群を形成しますが,この群は連続的に変わる変数 s の関数として与えられるので連続群と呼んでいます。
ついでに無限小変換とPoisson括弧の関係について少し触れておくと,無限小変換でq, p の任意の関数 F(q,p) の受ける変化は
F(Q,p) - F(q,p) =ε[F, G]
で,これは F と変換の母関数 G の Poisson括弧で表わされました。
>(q_i,p_i) が正準座標系、(Q_i,P_i)がこれと異なる座標系だとします。 x=(x_1,…,x_2f)=(q_1,…,q_f,p_1,…,p_f)、X=(X_1,…,X_2f)=(Q_1,…,Q_f,P_1,…,P_f) とおき、2f 次正方行列 M=(∂x_i/∂X_j) を考えれば、変換 x=(q_i,p_i)→X=(Q_i,P_i) が正準変換であるためには、M がシンプレクティック行列であることが必要十分です。
ご指摘の通りです。正準変換は 2f 次元の位相空間における体積を不変に保ちます。言い換えればJacobian = detM ということですね。
>鏡映変換が離散変換であることの証明は、いかなるものでしょうか。
さて,話は飛びますが単連結というのはパラメータ空間に引いた任意の閉曲線がその空間の外へ出ることなしに,連続的変形によって1点に縮めることができる(山内恭彦「回転群とその表現」(岩波))というものでした。
鏡映変換を考えると,直感的な話になりますが(←数学的な証明は残念ながら不勉強のため見たことがありません(^^);),これは座標系が右手系から左手系(逆もあり)へ変換することですから,連続的な変形では乗り移れないですね。例えばx = -x という変換を考えた場合,xを無限小縮めていくことを重ねていけば -x に到達するではないかと思えますが,その過程で座標系の向き(右ねじの進む方向が逆になる)が不連続に変化するという境界(?)にぶつかります。これゆえ離散変換と呼ばれると考えていますが,いかがなものでしょうか。
>シンプレクティック多様体の議論は、全く知らない分野です。
解析力学から発展した数学の一分野だと伺いましたが、学習することにより解析力学自体の理解が進むのであれば、毛嫌いせず勉強した方が良いでしょうか……
このご質問に真正面からお答えできるほどの力はありませんので,蛇足として聞き流してください。
解析力学の数学的構造にご興味があるのでしたら微分幾何学からのアプローチとして面白いと思います。そうではなく,量子力学の橋渡しとして解析力学を勉強されるのでしたら特に必要はないと思います。素粒子論を勉強される場合には知識として有力になりますが,その場合は対処療法的に勉強されるのも一つのやり方ではないかと愚考します。。。