質問です

  • バク
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  • 2016/08/15 (Mon) 11:59:30
お久しぶりです。
その後、素粒子標準模型の勉強を続けていますが、遅々と進みません。
計算もさることながら、素粒子の分類と使い方が今ひとつスコンと落ちてこないのです。
目標は中性子の崩壊計算です。

さて、下記のサイト(HPからつながらないのですが…検索でたまたま見つけました)
http://hb3.seikyou.ne.jp/home/E-Yama/RelQCD.pdf

このテキストにある「相対論的シュレーディンガー方程式」の節で因果律と矛盾する根拠に、画像でアップした式がありますが、これについて何か参考になる資料を紹介していただければうれしく思います。
よろしくお願い申し上げます。

私は今、一般相対論的量子論を考えているのですが、テキストにある「相対論的シュレーディンガー方程式」は大いに参考になるものです。
うまくいけば今の中期量子論をさらに量子力学に近づけらレルのではないかと妄想しています。

Re:質問です

  • KENZOU
  • 2016/08/15 (Mon) 15:11:01
バクさん、こんにちは、KENZOUです。

>HPからつながらないのですが…

失礼しました。別のファイルがリンクされていましたね。早速修正しておきました(残念ながらLatexで書いた原稿を逸失したらしく、pdfを生協のサーバーから逆ダウンロードして対処)。

さて、ご質問の件ですが

>「相対論的シュレーディンガー方程式」の節で因果律と矛盾する根拠に、画像でアップした式がありますが、これについて何か参考になる資料を紹介していただければうれしく思います。

画像でアップされた式は「ジョルダン・パウリの不変Δ(デルタ)関数」とか単に「不変Δ関数」と呼ばれます。これに関する資料としてワタシの手元にあるのは

1)西島和彦「相対論的量子力学」(培風館)P6-7
2)西島和彦「場の理論」(紀伊国屋書店)P60-62
3)中西襄「場の量子論」(培風館)P69
4)A.N.カマール、高橋康訳「場の理論計算入門」P35-36

いったところです。4)の資料には次のような分かりやすい説明が載っています。
『微視的因果律というのは、任意の2つの物理量が、互いに空間的に離れたところで交換することをいう。つまり任意の2つの物理量は、空間的に離れたところで同時に正確に測定できる。言いかえると、任意の2つの物理量は、空間的に離れたところで、不確定性関係からくる制限を受けない。
   [φ(x),φ(y)]=0 (xとyが空間的)』

また、ネット上では東島清先生の
「場の理論のまとめ」
http://www-het.phys.sci.osaka-u.ac.jp/‾higashij/lecture/pa05/ft_rev1_h17.pdf P6-7
などがあります。

その他、「不変デルタ関数」で検索すれば目的に沿ったものが見つかるかも知れませんね。

>私は今、一般相対論的量子論を考えているのですが

中西襄「相対論的量子論」というBLUE BACKSの一般向けの本があります。でてくる数式は最小限ですが、物理的な意味をしっかりと理解するのには結構いい本だと思いますので、ご紹介しておきます。

Re:質問です

  • バク
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  • 2016/08/15 (Mon) 17:51:54
ご丁寧な回答ありがとうございますm(_ _)m

ご紹介いただいた資料で、あの積分計算を実行する方法について述べたものはあるでしょうか?

なお、東島清先生の「場の理論のまとめ」は
http://www-het.phys.sci.osaka-u.ac.jp/~higashij/lecture/pa05/ft_rev1_h17.pdfのことですね
早速目を通しました。ありがとうございました。

例えば、クーロンポテンシャルを組み込んだKG方程式をDirac方程式にしないで、√したまま固有値の式にすれば(少し無理がありますが…保存系の場合許されるのでは?と思っています)、簡単に水素原子の微細構造の式が得られます。この場合、負エネルギーは無視しています。これをどう捉えたら良いか悩んでいます。

Re: 質問です

  • KENZOU
  • 2016/08/15 (Mon) 21:56:53
>あの積分計算を実行する方法について述べたものはあるでしょうか?

資料3)をご覧ください。

>クーロンポテンシャルを組み込んだKG方程式をDirac方程式にしないで、√したまま固有値の式にすれば、簡単に水素原子の微細構造の式が得られます。この場合、負エネルギーは無視しています。これをどう捉えたら良いか悩んでいます。

H∝√としてHΨ=EΨを解くわけですか。√の中の演算子の処理をどうする? まさかどこかで2乗してルートを外しているということはないと思いますが、ワタシはこの技術的な問題にクラクラしてしまい、アドバイスできるヒントが浮かびません。。。

少し余談ですが、歴史的な話として、シュレーディンガーは第Ⅳ論文(シュレーディンガー選集1・共立出版)で相対論的な波動方程式としてクライン・ゴードン(CG)方程式を導き、水素原子のエネルギー準位を求めましたが、実験に合う結果が得られなかった。スピンを考えに入れればうまくいっただろうとは言っていますが、それ以上はやらなかった。そこで彼は相対論を諦め、水素原子の非相対論的取り扱い(シュレーディンガー方程式)を先にしたということです。
CG方程式で E<<mc^2 という非相対論的近似をすればシュレーディンガー方程式がでてきます。シュレーディンガー方程式にはスピンという概念が含まれていないので、この方程式に従うのはスピンが0の粒子、したがってCG方程式はスピンが0のボ―ズ粒子を記述する方程式となります。シュレーディンガーの相対論は電子の電磁的相互作用の記述には不適だったのですね。

Re: 質問です

  • バク
  • 2016/08/16 (Tue) 17:24:47
ご丁寧な返信ありがとうございます。

>√の中の演算子の処理…
これは私が考えたことなのですが…

運動量演算子をP、運動量関数をp(r)と表すと、Schrödinger方程式ではP^2ψ_n=p(r)^2ψ_nになります。すると、水素原子の場合

{(P^2)/2m}ψ_n+V(r)ψ_n
={p(r)^2/2m}ψ_n+V(r)ψ_n=0

ここで、{p(r)^2/2m}ψ_n+V(r)ψ_nはrの関数部分が消され、Bohr模型と一致します。

このような、運動量関数とポテンシャル関数の和で関数部分が打ち消されて(p(r)^2にV(r)を消してしまう項ができて、定数だけの式になる)、定数値のみの式に書き直せるのは、水素原子のような保存系に限られた結果だと思います。

この考えを水素原子のKG方程式に適用させます。その上で、ψ_n→ψ_nj j=ℓ+s
に拡張させれば、Dirac方程式で求めた水素原子のエネルギー準位と一致します。

これは前期量子論のゾンマーフェルド模型に近いものがあります。
本来はWKB法でゾンマに持って行くべきなのかも知れませんが、計算がゾンマよりはるかに簡単で同じ結果が得られます。

資料3)とシュレーディンガーの第Ⅳ論文は目を通します。

ありがとうございました。

Re: 質問です

  • バク
  • 2016/08/17 (Wed) 23:56:36
不変デルタ関数の積分について、あもん様が丁寧な回答をアップしていただけました。
良かったら参考に覗いてみてください。私は大変勉強になりました。
何しろ複素積分が苦手なものですので…
http://www.kikuya-rental.com/bbs/?owner_name=amonphys&action=img&thread_id=146&reply_id=5&number=1&size=3

Re:質問です

  • KENZOU
  • 2016/08/18 (Thu) 10:09:11
よかったですね。

>複素積分が苦手なものですので

このHPの数学のコーナーに「対話・ローラン展開と留数・主値積分」というレポートをアップしていますが,ひょっとしたら参考になるかも知れません。 
(投稿前に、内容をプレビューして確認できます)